2008年07月19日

「今敏〜十年の土産」 広島市立大学公開講座 広島アニメーションアカデミー2008

 7月13日(日) 広島市立大学公開講座 広島アニメーションアカデミー2008は、講師に今敏氏を迎えてお送りしました。今敏氏の印象的な言葉を中心に講演の内容を紹介します。



◆「好きなコトをして生きるのはカッコいい」

 小さい頃は、虫捕りに、切手収集、プラモデルを作ったりと、スタンダードな子供だった。たいていのことに飽きてしまったが、絵を描くことだけは飽きなかった。ギタリストになった兄(今剛氏)に触発されて、「好きなコトをして稼ぐのはカッコいい」と、高校2年生のとき、将来は絵で生きていきたいと思い立ち、武蔵野美術大学へ進学した。



◆「漫画家になりたいと思ったわけではない」

 武蔵野美術大学在学中、将来、絵を媒介にした仕事であればイラストレーターでも漫画家でも何でもいいと思うなか、もともと漫画が好きで、たまたま応募した作品が新人賞を受賞。漫画業界と縁ができ、学校に通いながら短編等制作し、なんとなく漫画家になり、学校を卒業する頃には漫画家になっていた。



◆「なんていい加減な業界」

『老人Z』(=大友克洋原作・脚本)で、美術設定を担当することがアニメ業界との最初の関わりとなった。アニメ業界の印象は、よく言えばおおらかな感じだが、趣味を仕事にしている人たちは仕事のやり方もてんでバラバラで、時間も守らない、なんていい加減な世界だと感じた。『老人Z』はスケジュールが崩壊し、結果、試写会はおろか、公開にも間に合わず大阪の劇場では2日遅れのスタートとなった。



◆「絵が描ければアニメはできる」

『走れメロス』、『MEMORIES−彼女の想いで−』にそれぞれレイアウト・脚本で参加する中、自分でも絵コンテ・演出がやってみたくなった。『ジョジョの奇妙な冒険』で脚本・コンテ・演出をすることになり、作画のチェックは想像以上に大変だったが、絵が描ければ(観察力・デッサン力があれば)時間はかかるかもしれないがアニメはできると実感した。



◆「クリエーターはその作品が最大のプロモーションである」
 
その後、再び漫画の連載を2本進めるなか、『パーフェクトブルー』の話が舞い込んできた。これまでも自分がやりたいと選んだ仕事はなく、自分の知らないところで次の仕事につながっていく。クリエーターはその作品が最大のプロモーションであり、これ以上雄弁なものはない。



◆「『パーフェクトブルー』は自分には向いていないと思った」

『パーフェクトブルー』のシナリオを初めてみたとき、これはホラー・スプラッターで、自分の分野ではない、自分には向いてないと思ったが、ストーリーを変えてもいいとのことだったので、やってみることに。制作現場は、スケジュール崩壊から作品以上にサスペンスフルで制作現場の緊迫感が作品に反映したのでは。『パーフェクトブルー』は監督とし良い経験を積むことができた作品だった。



◆「既存のアイデアを新しい手法でつなぐとこれまでにないモノが生まれる」

『千年女優』はアイデアが評価された作品だが、この作品はよくあるアイデアで既存の映画をモチーフにしたもの。既存のアイデアを新しい手法でつなげていくことでこれまでにないモノが生まれる。新しいアイデアとは、関係のさせ方を発見すること。かたくなに誰もがやったことのないことを探すより、既存のアイデアに新しい関係性を探してみると新しい発見がある。



◆「作れば作るほど、理想が遠くなる」

 クリエーターはモノを作るとき理想イメージを追いかける。だが理想に辿り着けるか?いや絶対に追いつけない。作れば作るほど、もっと良いものを求めていくため、理想がどんどん遠くなる。『千年女優』も制作課程でどんどんイメージが膨らんでいった。理想を追いかけ続ける姿こそ、モノづくりのあるべき姿である。



◆「アイデアを出しつづけることで、新鮮さを維持する」

 TVシリーズ『妄想代理人』では、これまで映画で使えなかったアイデアをリサイクルしながら、13話のアニメバラエティーにチャレンジした。そのころ、これまで監督として映画3本分の経験しかなかったことを、自分の弱点と自覚していたので、TVシリーズをすることで、すべての制作課程を一度に13回できたことは、貴重な経験だった。毎回、常にアイデアを出しつづけることで、新鮮さを維持することがクリエーターにとって大事である。



◆「頭が裏返るくらいイメージを考えるのが大変だった」

 雑誌で筒井康隆氏と対談したとき、筒井氏から直々に小説『パプリカ』のアニメ化をオファーされた。『パプリカ』はこれまでの「ストーリーを見せるためのビジュアル」から「ビジュアルのためのストーリー」というあらたな観点で望んだ作品。夢を映像化することは魅力的な作業だが、これまで上手く映像化できた作品はほとんどない。『パプリカ』は頭が裏返るくらいイメージを考えるのが大変だった。



 今敏監督は、集まった大勢のファンの前で、これまでのキャリアについて語り尽くされました。最後に、現在制作中の最新作の内容も少しだけ紹介、公開は来年!か再来年!?…その次の年??だとか。待ち遠しいですね。



posted by 広島アニメーションビエンナーレ実行委員会 at 23:35| Comment(0) | トピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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